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2008年9月 1日 (月曜日)

俗・こころ

皆さん、これからママの妄想(暴走)がスタートします。頑張ってついて来てね!
この物語は文豪夏目漱石先生の「こころ」とは一切関係なく
後半部分の描写はママの私生活とは一切無縁、だそうです。
そこんところよろしくね!!おやすみなさーい!!
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当時私はまだ二十歳でした。
自分で言うのも何ですが若くて美しい私には降るほどの縁談があり
それらを全部断ってきたのは私に意中の人がいたからです。
彼からのプロポーズを受けた1週間後
どうしても話したいことがあるから会いたいと彼から電話があり
いそいそと出かけた私は彼から思いもよらぬことを聞かされました。

3日前に自殺した彼の親友のKさんの死は自分が原因だと言うのです。
Kさんから私への恋心を打ち明けられた彼は「実は自分も」と言いそびれ
先に手を打って私に求婚し、Kさんは私たちが結婚すると知ってショックを受け
「おめでとう」と言い残して自ら命を絶ったというのです。

「僕は卑怯な人間だ。でも僕は君に嘘はつきたくない。
こんな僕を軽蔑して別れるというのなら仕方がない。
でももしもこんな僕でもいいと言ってくれるのなら僕と結婚してくれないか?」
愛する人からこんな告白をされてNOと言える女性がいるでしょうか。
正直に話してくれた彼の誠実さに打たれただけでなく
私が彼のプロポーズを断ったら今度は彼が自殺してしまうかも知れない
私のために2人もの男性を死に追いやってはならないという思いもあったのです。
私の心はとうに決まっていました。彼の手を取りこう言ったのです。

「ありがとう。よく話してくれたわ。もうそんなに自分を責めないで。
Kさんはお気の毒だったけれど、彼の死はあなたのせいじゃないわ。
これからは2人で力を合わせてKさんの分も一生懸命生きていきましょう。」
こうして私たちは結婚しました。めでたしめでたし。


あれから30年・・・・・。(綾小路きみまろじゃないのよ。)
夫の眉間に深く刻まれていたシワは中年の脂で埋まり頬もふっくらとし
その表情からはいかなる苦悩も読み取ることができません。
一体自分の過去の行状を反省しているんだかいないんだか。
私もまたかつてのような無垢な乙女ではありません。そして思うのです。
彼の告白はもしかしたら私の気を引くための嘘だったのではないかと。
いやもっと悪く考えたらあれは自殺ではなくて彼が本当はKさんを殺して
それをつくろうためにあんな作り話をしたのかも知れない。
だって証拠など何もないもの。Kさんの遺書も彼がねつ造したのかも知れない。

あ、いえ、いくら何でもそれはサスペンスドラマの見過ぎですね。
私もそんな恐ろしい男性と結婚したとは思いたくありません。
でも彼は本当に過去のことなど忘れてしまったのでしょうか。
この手の告白というのはたいてい言った方がすっきりして忘れ
言われた方が引きずってしまうものです。
それに好意を持っている相手に告白するとき人は多少なりとも
自分をよく見せようと軽く嘘をついたり真実をねじ曲げて話すものです。
どこまでが本当だったのかもう確かめるすべはありません。
今さら蒸し返して夫に尋ねたら・・・実はあんな顔をしていても今も引きずっていて
私に過去のことで責められていると思い自殺してしまうかも知れない・・・
結局私は何も尋ねることができないのです。
過去に一度許してしまった私は真実を追究する機会を永久に失いました。

どうか夫が本当に親友のKさんを死に追いやってしまい、でも誠実な男性で
今もそのことで密かに苦悩し続ける男であって欲しいような欲しくないような
自分でもどうあってほしいのかがわかりません。
こんなふうに余計なことばかり考える不誠実な自分にも疲れました。
彼と私は結婚すべきではなかったかも知れません。
何だか生きているのがしんどくなりました・・・。
    
     完。(←え!これで!?)

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