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2006年7月24日 (月曜日)

「愛と詩を見つめて」(3)

大阪に着いたマコトはタミコの入院するC病院に向かった。
病院の南側のガン病棟と呼ばれる建物の中にタミコはいる。
ベッドの上でタミコが静かに横たわっていた。
両目に巻かれた真っ白い包帯が痛々しい。

マコトはそっと声をかけた。
「タミコ・・・?」
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「マコ・・・マコなの?どこにいるの・・・?」

「僕はここにいるよ。」マコトはタミコの手を握りながら言った。

タミコ「来なくていいって言ったのに・・・。」

「あんな手紙もらったら誰でも来るよ。」
マコトは少しはにかみながら答えた。

マコト「詩集を持ってきたんだ。約束どおり僕が読んであげるよ。
    誰の何ていう詩か当ててごらん。」
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マコトは詩集を読み始めた。

「こぼれ落ち葉をかき集め 野糞のごとき君なりき
こぼれ落ち葉に火をはなち 下僕(しもべ)のごとき我なりき
明石の恋のはかなさは こぼれ落ち葉の糞なりけん・・・・」

タミコ「あーわかった・・・!!!粉砂糖春夫の「明石の恋」ね!!
   私、彼のこの詩が大好きなの・・・!!!
   ねえ、野糞といえば覚えてる?ベテラン女優の民子と新人の健太が共演した・・・」

マコト「もちろん覚えてるよ、君と初めて一緒に見た映画だもの。」

民子「面白かったね「野糞の墓」!!私はあれを見て笑いころげて」

マコト「そして僕は泣き崩れたんだ。」

タミコとマコトは映画館で知り合った。
たまたま隣り合わせた2人は、同じ映画を見て全く違う感想を持つ相手に
驚きつつも強く惹かれ合った。
それから2人のデートはいつも映画館だった。

タミコ「楽しかったなあ・・・ほんの半年前のことなのにもう何年も昔のことみたい。
    もう一度・・・マコと一緒に映画が見たいなあ・・・・・・。」

白い包帯の下からこぼれた大粒の涙が、マコトの胸を打つ。

「うん・・・・・うん・・・・・先生の許可が下りたらね。」
マコトはそう答えるのがやっとだった。


♪マコ・・・わがまま言ってごめんね タミコは映画に行きたかったの~♪
♪たとえこの目は見えずとも 2人で行った思い出を 涙で話してくれたマコ~♪

つづく。。。

注:この物語はフィクションです。「愛と死をみつめて」とは何の関係もありません。
  佐藤春夫の詩「海辺の戀」とも全く無関係です。

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